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札幌高等裁判所 昭和55年(ネ)317号 判決 1982年10月26日

控訴人(原告)

高橋厳

ほか一名

被控訴人(被告)

安田火災海上保険株式会社

主文

本件各控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

一  控訴人らは、「原判決を取消す。被控訴人は控訴人らに対し、それぞれ金七五〇万円及びこれに対する昭和五四年九月二〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張と証拠の関係は、次のとおり付加するほかは、原判決事実摘示と同一であるのでこれを引用する。

(控訴人らの主張)

本件事故当時の加害車の具体的運行において、亡聡宏は、酩酊していたうえ、年上で体格も大きいキヤンプ旅行仲間のリーダー格であつた本間のいいなりになる立場にあつたため、同人から飲み物を買いに行くことを誘われて断わることができず、他に使用できる自動車もなかつたので、やむなく同人に加害車を提供してその運転を委せたうえ、これに同乗して随行したにすぎないから、亡聡宏の同乗の形態は、従たるもので便乗型に属し、その運行支配の程度、態様は、本間によるそれよりも間接的、潜在的、抽象的であつたというべきであり、従つて亡聡宏は、本間に対する関係で自賠法三条の他人であることを主張し得るというべきである。

(被控訴人の主張)

右主張事実はすべて争う。

(証拠関係)〔略〕

理由

一  当裁判所も控訴人らの本訴請求を失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、左記のほか、原判決理由説示と同一であるのでこれを引用する。

1  原判決七枚目裏五行目の「原告らは、」からその七及び八行目の「前提となるところ、」までを削除し、その八行目の「本間は」からその九行目の「抗争するので、まず」までを「亡聡宏が、第三者に対する関係では本間とともに加害車の運行供用者になるけれども、本間に対する関係では自賠法三条の他人に該当する旨を主張するので、」と改め、その末尾より四行目の「自賠法」からその末尾より二及び三行目の「解されるところ、」までを削除し、その八枚目表六行目の「出発し、」の次に「その出発地から車で一〇分足らずのところにあるはずの」を挿入し、その末尾より六行目の「本間は、」からその裏八行目の「事実関係によれば、」までを削除し、その八行目の「本間は、」からその末尾より三行目の「解されるから、」までを「本間と亡聡宏とは、飲み物の購入という共同目的のためともに加害車に対し運行支配を及ぼしていたとみられるので、いずれもその共同運行供用者であつたということはできるけれども、しかし本間は、加害車を所有する亡聡宏に対しその使用を権利として主張し得るような権原を有していたわけではないから、その共同保有者であつたとはいい難く(従つて本件事故につき本間に損害賠償義務を生じたとしても、被控訴人には、その損害を填補すべき義務を生じない。)、またこの点はおくとしても、本間による加害車の運行は、近くの自動販売機まで飲み物を買うために往復するという目的の限定された一時的なものにすぎないところ、亡聡宏は、加害車を所有し、しかもこれに同乗していたのであるから、その具体的運行を監視しつつ、本間に優位して管理、支配をなし得る立場にあり、従つて」と改める。

2  そこで控訴人の当審における主張について考えるに、成立に争いのない甲第一、二号証、原本の存在と成立に争いのない乙第二号証、原審証人本間時則、同西田秀徳の各証言によると、本件事故当夜のキヤンプ旅行に参加した本間、松本、西田及び亡聡宏のうちでは、本間が最年長ではあつたが、同人は、高校時代に通学の列車で知り合つた松本を通じて、卒業後松本の行きつけの喫茶店でその高校の同級生であつた西田や亡聡宏とも知り合うようになつたもので、右キヤンプ旅行は、そのようにして知り合つて気心の知れた仲間同志となつた右四名が、各自の自動車を運転し、かつ亡聡宏を除く他の三名は、交際中の女性を同伴して自主的に参加したものであることがそれぞれ認められるから、本間が最年長であるからといつて、他の亡聡宏を含むキヤンプ旅行参加者に対し指揮、統率や指図、監督をなすような支配関係があつたとはいえないし、また右に引用した原判決理由説示のうち、亡聡宏が本間に同行して飲み物を買いに出かけることになつた経緯に照らすと、その同行が本間との関係で従属的ないしは付随的であつたともいい難く、従つて控訴人の右主張は、その前提が否定されるので採用できない。

二  よつて控訴人らの本訴請求を棄却した原判決は相当であるから、民事訴訟法三八四条一項に従い本件各控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき同法八九条、九五条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 安達昌彦 渋川満 藤井一男)

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